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【書評】今すぐ読みたい!10代のためのYAブックガイド150!2

大人も読みたくなる名著がズラリ

まず『10代のための~』という枕詞は、ターゲットを明確にしぼるためにつけられたのだろうが、YA(ヤングアダルト)向け作品とはいえ、大人が読んでも十分楽しめる本たちがずらりと150冊紹介されている。

文末に目次を記載しているが、参照いただくとわかる通りあつかう範疇は幅広い。
ファンタジーからドキュメンタリー、フィクションにノンフィクション、青春ものに戦争もの、小説だけでなく漫画など、良いと思われる本は分け隔てなくピックアップされている。 

またおもしろいことに、本ひとつひとつの紹介文の書き手が違う。
そしてその書き味が、人によって見事にバラバラなのである。

極めて端的に内容を要約してくれていて、ここぞという見どころを紹介してくれる良質な書き手もいれば、独特すぎる感性を発揮して本を紹介…するならまだしも自分自身の主張や表現をここぞとばかりに登場させて、結局レビューを読んでいるのか、この書き手のまったく新しいエッセイを読ませられているのかわからなくなるような人も、ちらほらといる。

なおレビュアーのひとりに小説家・森絵都がおり、本の紹介文ながら読みやすく、かつおもしろくてついつい読み進めてしまうようなものが書けるのはさすが。

筆者がこの本を読もうと思ったキッカケがそもそも、

  • 数多くの人の「書評」を学ぶことができる
  • さらに次に読むべき新たな本たちと出会うことができる

この2点である。 

監修は記載のある通り2名だが、書評者・レビュアーは25名と多岐にわたる。
年代も取り扱う分野も、過去の背景も異なる面々のつづる紹介文は、ひとつひとつが大事な教科書といえる。
(稀に反面教師的な文章がキラリと光ることもあったりしなくもない)

書き味の違う25以上もの文章に一冊で触れられるのもまた、この本の隠された魅力なのである。 

最後に、筆者がまさにヤングアダルトの時代にハマっていた推理ホラー小説作家の乙一。
彼に別名で再び出会えたことが、まず挙げておきたいこの本の収穫だったと告白せずにはいられない。

単なる調査不足と読書のブランクだが、まさか当時好きだった乙一が今は別名で、ホラーではないさわやか青春小説を書いているとは知らなかった。

150ある紹介本の中に少なくとも1つは、読まなくてはならない作品をとある読者が見つけられた瞬間である。

こうしたふとした機会、ひょんなめぐり合わせで運命の本に出会えたりするからこそ、本はえり好みせずにどんどん触れていくべきなのだ。

150ある書籍の中に、そのレビューを読むことで気になる本がきっと見つかるはず。

本の情報 

今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150! 2

  今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150! 2

 

監修

金原瑞人/ひこ・田中

出版社

ポプラ社

発売日

2017年11月16日 

目次

1章:日常を見つめる
 青春が始まる
 部活の味わい
 この気持ちが恋だった
 子どもの目線、家族の不思議

2章:異世界を旅する
 それぞれの試練をこえて
 空想が現実を照らしだす
 心の迷宮へ

3章:社会とつながる
 「生きづらさ」を抱えて
 遠くて近い戦争
 歴史の渦のなかで

4章:詩もアートもコミックも
 ことばの魔法
 二次元が三次元を超える

5章:社会と向き合う
 戦争を知る、災害を語る
 知ることから始まる
 あなたとわたしの性・ジェンダー

6章:サイエンス、テクノロジー、そしてカルチャー
 科学が世界をひらく
 文化を読む
 クリエイターには秘密がある

あとがき

なお本文内で触れた、乙一のさわやか青春小説とは以下である。

くちびるに歌を (小学館文庫)

  くちびるに歌を (小学館文庫)

 

そしてさらにぶっとんだことに、筆者はとうの昔にこの作品を知っていた。すでに触れていたことに気づいた。

どうもこのタイトル知っている気がする…と調べてみたところ、これはすでに新垣結衣主演によって同名で映画化されており、筆者はすでにそれを観ていたのだった。
乙一原作と気づかずに、である。 

くちびるに歌を Blu-ray 愛蔵版

  くちびるに歌を Blu-ray 愛蔵版

 

今この記事を書く瞬間まで「乙一のファンなんです」とカミングアウトしなくて良かった。
赤っ恥をさらすところであったことこの上ない。 

 

ちなみにタイトルでわかることだが、このYAブックガイドは1も存在する。

今すぐ読みたい!  10代のための  YAブックガイド150!

  今すぐ読みたい! 10代のための YAブックガイド150!

 

筆者は2から読んでしまったが、こういったものは順番どうこうあるものではないので気にしていない。

そしてこれからこれらの本に触れてみようかなと思うかたも、どうか特に1だの2だのといったことは気にせず、気になるタイトルがあるほうからまずは読んでみることをお薦めする。